
妊娠中に「出産前に夫婦で海外旅行を楽しみたい」と考える方は少なくありません。いわゆる「マタ旅」は近年注目を集めていますが、妊娠中の海外渡航には通常の旅行とは異なるリスクや制約があります。 海外では日本と医療体制が異なり、万が一のときに言葉の壁や高額な医療費が大きな負担になることがあります。渡航のタイミングや航空会社のルール、保険の補償範囲など、事前に確認すべきポイントは多岐にわたります。 この記事では、妊婦が海外旅行を安全に楽しむために知っておきたいリスクや注意点、おすすめの時期、必要な準備について網羅的に解説します。かかりつけ医と相談したうえで、無理のない旅を計画するための参考にしてください。
目次
妊娠中の海外旅行には、国内旅行にはない特有のリスクがあります。渡航を検討する前に、どのようなリスクがあるのかを正しく理解しておくことが大切です。
妊娠中は血液量が通常の約1.4倍に増加し、血液が固まりやすい状態になっています。そのため、長時間同じ姿勢で座り続けるフライトでは、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)のリスクが高まります。
妊娠していない女性の静脈血栓症の発症リスクが年間1万人あたり1〜5人であるのに対し、妊娠中は5〜20人と報告されています。特にフライト時間が6時間を超える長距離路線では注意が必要です。
予防策としては、通路側の座席を選んでこまめに立ち上がること、機内で足首を回すストレッチを行うこと、弾性ストッキング(着圧ソックス)を着用すること、水分をしっかり摂ることが挙げられます。
海外では日本のように国民皆保険制度が整っていない国が多く、妊娠に関するトラブルが発生した場合の医療費は非常に高額になりがちです。たとえばアメリカでは、通常分娩でも150〜200万円、帝王切開では250〜300万円以上かかるケースがあります。
加えて、現地の医師に日本語が通じないことがほとんどです。妊娠の経過や既往歴、服用中の薬などを正確に伝えられないと、適切な処置を受けられないおそれがあります。
渡航先によっては、妊婦にとって特に危険な感染症が流行している地域があります。たとえばジカウイルス感染症は、妊娠中に感染すると胎児に小頭症などの先天性障害を引き起こす可能性があり、厚生労働省も妊婦の流行地域への渡航を控えるよう注意喚起しています。
ジカウイルスは中南米や東南アジアの一部地域で蚊を媒介して感染します。感染しても自覚症状が軽いことが多く、気づかないまま胎児に影響が及ぶ危険性があるため、渡航先の感染症情報は厚生労働省検疫所(FORTH)のウェブサイトで必ず確認してください。

妊娠中に海外旅行を計画するなら、時期の選択が最も重要なポイントです。妊娠の各段階によってリスクや体調が大きく異なるため、無理のないタイミングを選びましょう。
一般的に海外旅行に最も適しているのは、妊娠中期の安定期(妊娠16〜27週、妊娠5〜7か月)です。この時期はつわりが落ち着き、おなかもまだそれほど大きくないため、比較的体を動かしやすい時期といえます。
ただし「安定期=安全」ではない点に注意が必要です。安定期であっても切迫流産や切迫早産のリスクはゼロではなく、体調が良くても突然の出血やおなかの張りが起こる可能性があります。必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、許可を得てから計画を進めてください。
妊娠初期はつわりの症状が強く出やすく、流産のリスクも高い時期です。体調の変化が激しいため、長時間の移動や慣れない環境での生活は体に大きな負担をかけます。
妊娠後期はおなかが大きくなり、長時間の座位が苦しくなるだけでなく、早産のリスクも高まります。航空会社の搭乗制限も厳しくなるため、現実的に海外渡航が難しくなる時期です。渡航先で早産になった場合、新生児集中治療室(NICU)の体制が日本と同等に整っている国は限られています。
妊婦にとって理想的なフライト時間は4〜5時間以内です。これを超える長距離路線では、エコノミークラス症候群のリスクが高まるだけでなく、体への疲労も蓄積しやすくなります。
日本から4〜5時間以内で行ける渡航先としては、韓国(約2〜2.5時間)、台湾(約3〜4時間)、グアム(約3.5時間)などがあります。医療体制が整っていて日本語対応の病院がある渡航先を選ぶと、緊急時にも対応しやすく安心感があります。

妊娠中に飛行機を利用する場合、航空会社ごとに搭乗条件が定められています。出産予定日からの日数によって診断書の提出や医師の同伴が必要になるため、予約前に確認しておきましょう。
ANAの国際線では、出産予定日を含めて28日以内に搭乗する場合、搭乗日を含めて7日以内に発行された医師の診断書が必要です。さらに出産予定日を含めて14日以内の場合は、診断書に加えて医師の同伴が必須となります。
出産予定日から29日以上前であれば、特別な書類は不要です。ただし体調に不安がある場合は、事前にANAのサポートデスクへ連絡しておくとスムーズです。
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JALの国際線では、出産予定日を含めて28日以内に搭乗する場合、搭乗日を含めて7日以内に作成された診断書の提出が求められます。出産予定日を含めて14日以内の場合は、診断書の提出に加えて産科医の同伴が条件となります。
出産予定日を含めて28日以内の場合、ウェブサイトでの予約ができないため、JALの予約窓口に直接連絡する必要があります。双子以上の妊娠や早産の経験がある場合も同様に電話での予約が必要です。
格安航空会社(LCC)や海外の航空会社でも、妊婦に対する搭乗制限があります。航空会社によっては妊娠36週以降の搭乗を全面的に禁止しているケースや、32週以降で診断書を要求するケースもあります。
搭乗制限のルールは航空会社ごとに異なるため、チケット購入前に必ず公式サイトで最新の規定を確認してください。往復便で異なる航空会社を利用する場合は、それぞれの搭乗条件を個別に調べる必要があります。

妊娠中の海外旅行で最も心配なのが、現地でトラブルが起きたときの医療費です。海外旅行保険の加入可否と補償範囲を事前に把握しておきましょう。
多くの海外旅行保険では、妊娠そのものや正常な出産は補償の対象外です。ただし、妊娠22週未満であれば、異所性妊娠(子宮外妊娠)、流産、妊娠悪阻(つわりの重症化)といった妊娠に起因する「異常」について治療費が補償される保険があります。
注意すべきは、補償の判断基準が「旅行出発時の週数」ではなく「治療開始時点の週数」である点です。出発時は妊娠20週でも、旅行中に22週を超えてから症状が出た場合は補償対象外になる可能性があります。旅行の日程と妊娠週数を照らし合わせて、余裕のあるスケジュールを組みましょう。
妊娠22週以降に発生した妊娠に関する症状は、日本国内の海外旅行保険ではほとんど補償対象外です。これは保険会社の多くが「妊娠満22週以後の妊娠異常は免責」としているためです。
妊娠22週以降でも補償を受けたい場合は、海外の保険会社が提供するプランを検討する方法もありますが、保険料が高額になるケースが多い点は理解しておく必要があります。
海外旅行保険に加入する際は、以下の点を必ず確認してください。妊娠に関する治療が補償対象に含まれているか、補償の上限金額はいくらか、治療開始時の妊娠週数で判断されるか出発時の週数で判断されるか、24時間対応の日本語サポートがあるかの4点です。
クレジットカード付帯の海外旅行保険では、妊娠に関するトラブルが補償対象外となっているケースがほとんどです。妊娠中の海外旅行では、妊娠関連の補償が明記された保険に別途加入することを強くおすすめします。

妊娠中の海外旅行では、通常の旅行準備に加えて、妊婦ならではのアイテムや事前準備が必要です。出発前にしっかりと準備しておくことで、現地でのトラブルに備えられます。
母子手帳は妊娠の経過や検査結果が記録されており、海外の医療機関を受診する際に重要な情報源となります。日本語と英語が併記された母子手帳もオンラインで購入できるため、英語圏への渡航時には用意しておくと便利です。
かかりつけ医に英文の診断書を作成してもらうことも重要な準備の一つです。妊娠週数、出産予定日、妊娠の経過、服用中の薬、既往歴などが英語で記載された書類があれば、現地の医師にスムーズに情報を伝えられます。海外旅行保険の保険証券も忘れずに携帯してください。
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出発前に、宿泊先の近くにある産婦人科や救急対応が可能な総合病院をリストアップしておきましょう。Googleマップで場所と電話番号を控え、日本語や英語に対応している医療機関があるかも確認しておくと万全です。
在外日本大使館・領事館の連絡先もメモしておいてください。緊急時に日本語で相談できる窓口があるだけで、精神的な負担が大きく軽減されます。大使館のウェブサイトには、現地の日本語対応病院リストが掲載されていることもあります。
妊娠中は免疫力が低下しているため、食あたりや食中毒のリスクが通常より高くなります。生水や生もの(生肉、生魚、加熱不十分な卵料理など)はできるだけ避け、加熱済みの食事を選ぶようにしましょう。
衛生状態が心配な地域では、ミネラルウォーターを持ち歩くことをおすすめします。また、おなかが張ったと感じたら無理をせず、すぐに休憩を取ることが大切です。旅行のスケジュールは余裕を持って組み、観光よりも体調を優先する意識を持ってください。渡航先での通信手段には、利用者No.1の海外eSIMアプリ「トリファ(trifa)」のようなeSIMを準備しておくと、現地での情報収集や連絡にも役立ちます。
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妊娠中の海外旅行では、体調の急変や緊急時に備えて、いつでもインターネットに接続できる環境を整えておくことが欠かせません。現地の医療機関を検索したり、翻訳アプリで症状を伝えたり、家族と連絡を取ったりと、通信手段はまさにライフラインです。
利用者No.1の海外eSIMアプリ「トリファ(trifa)」なら、渡航前にアプリからデータプランを購入するだけで、到着後すぐにインターネットが使えます。SIMカードの差し替えが不要で、空港でレンタルWi-Fiを受け取る手間もありません。スマホ1台で手軽に通信環境を確保できるため、荷物を増やしたくない妊婦の方にもぴったりです。
体調に異変を感じたときにすぐ地図アプリで最寄りの病院を調べたり、翻訳アプリで医師に症状を伝えたりできるのは、妊娠中の旅行では特に頼もしいポイントです。出発前の準備として、ぜひ通信手段の確保も忘れずに行ってください。

ライター
トリファ編集部(海外旅行の準備・現地情報担当)
海外旅行におけるベストシーズン、持ち物、現地で気をつけることなど、海外旅行の準備と現地情報を初心者にもわかりやすくまとめています。内容は必要に応じてトリファの現地スタッフへのヒアリングを行い、現地の状況も踏まえて整理しています。あわせて季節・制度・営業時間など変わりやすい情報は、公的機関や交通機関・施設の一次情報を確認し、変更があれば記事へ反映します(記事内に最終更新日を明記)。