
「ノーログVPN」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。VPNサービスの多くが「ログを保存しない」と宣言していますが、開示請求を受けた場合に本当にユーザー情報が守られるのか、不安に感じる方も多いはずです。 近年、日本ではプロバイダ責任制限法の改正により「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」が2025年4月に施行され、発信者情報の開示手続きが整備されました。こうした法制度の変化に伴い、VPNのログ管理体制への関心が高まっています。 この記事では、ノーログVPNの仕組みや開示請求との関係を、法律と技術の両面から客観的に解説します。第三者監査の読み方やVPN本社所在国の重要性、実際にログ提供を求められた事例まで、信頼できるVPN選びに必要な知識をまとめました。 VPNの利用を検討している方や、すでに利用中で安全性を確認したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次

ノーログVPNとは、ユーザーの通信内容や接続履歴を記録・保存しないことを方針として掲げるVPNサービスを指します。ただし「ログを一切取らない」という表現には注意が必要です。VPN事業者が取り扱うログにはいくつかの種類があり、それぞれ性質が異なります。
ここでは、VPNサービスが扱うログの種類と、ノーログポリシーが実際に何を意味するのかを整理します。
VPN事業者が取得する可能性のあるログは、大きく3つに分類されます。それぞれの内容とプライバシーへの影響度を理解することが、VPN選びの第一歩です。
1つ目は「ユーザー情報ログ」です。アカウント登録時のメールアドレスや支払い情報など、契約に必要な基本データがこれにあたります。ほぼすべてのVPNサービスが取得しており、ノーログポリシーの対象外となるのが一般的です。
2つ目は「接続ログ」です。VPNサーバーへの接続日時、接続元IPアドレス、使用したサーバーの場所などが含まれます。サービスの品質管理やトラブルシューティングに使われますが、ユーザーの特定につながる情報を含むため、プライバシーの観点では慎重な取り扱いが求められます。
3つ目は「アクティビティログ(通信ログ)」です。閲覧したWebサイト、ダウンロードしたファイル、DNS検索の内容など、通信そのものの記録を指します。プライバシーへの影響が最も大きく、信頼できるノーログVPNはこの種類のログを一切保存しません。
「ノーログ」と宣言しているVPNでも、実際にはアカウント情報や課金データは保持しています。ノーログポリシーが対象としているのは、主に接続ログとアクティビティログです。
信頼性の高いVPNサービスは、アクティビティログを完全に排除したうえで、接続ログについても個人を特定できない形でのみ短時間保持する仕組みを採用しています。たとえばSurfsharkでは、接続情報をセッション終了後15分以内に自動削除する運用をとっています。
さらに、RAMオンリーサーバーと呼ばれる技術を導入しているサービスも増えています。従来のハードディスクではなくRAM(揮発性メモリ)上でサーバーを稼働させるため、再起動のたびにすべてのデータが消去されます。ExpressVPN、NordVPN、Surfsharkなど主要サービスがこの方式を採用しています。
こうした技術的な仕組みを理解することで、「ノーログ」という言葉の実態をより正確に把握できるようになります。
VPN事業者がノーログポリシーを宣言していても、それが本当に実行されているかどうかは外部からは確認しにくいものです。そこで重要になるのが、独立した第三者機関による監査です。
主要なVPNサービスは、国際的な監査基準であるISAE 3000に基づいた第三者監査を定期的に受けています。ExpressVPNは累計23回の第三者監査を公開しており、そのうちKPMGによるノーログポリシー監査は2025年2月時点で3回目を完了しています。NordVPNはDeloitteリトアニアによる6回目の監査を2025年12月に完了しています。
Proton VPNはSecuritumによる年次監査を受けており、2025年の監査でも「ユーザーのアクティビティログ、接続メタデータの保存、ネットワークトラフィックの検査は確認されなかった」と報告されています。
ただし、監査はあくまで特定時点でのシステム設計を評価するものです。「監査に合格した=永続的にログを取らない」という意味ではない点も覚えておきましょう。

ノーログVPNと開示請求の関係を理解するには、まず発信者情報開示請求がどのような制度で、どんなプロセスを経て行われるのかを知る必要があります。日本における最新の法制度を中心に解説します。
発信者情報開示請求とは、インターネット上で権利侵害(名誉毀損やプライバシー侵害など)を受けた被害者が、発信者を特定するために通信事業者に対して情報の開示を求める法的手続きです。
日本では、2022年10月にプロバイダ責任制限法が改正され、従来は2段階だった開示手続きが「発信者情報開示命令」として1つの裁判手続きに一本化されました。さらに2024年5月には同法が再度改正され、2025年4月から「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」として施行されています。
この改正により、大規模プラットフォーム事業者には権利侵害情報への迅速な対応が義務付けられました。Google、LINEヤフー、Meta、TikTok、X Corpの5社が「大規模特定電気通信役務提供者」に指定されています。
開示請求は一般的に次のような流れで進みます。まず、被害者がコンテンツプロバイダ(SNS運営会社など)に対してIPアドレスの開示を求めます。次に、取得したIPアドレスをもとにISP(インターネットサービスプロバイダ)に契約者情報の開示を請求します。
VPNを利用している場合、コンテンツプロバイダから開示されるIPアドレスはVPNサーバーのものになります。そのため、次のステップではVPN事業者に対して契約者情報の開示が求められることになります。
ここでノーログポリシーが意味を持ちます。VPN事業者が接続ログやアクティビティログを保存していなければ、裁判所や捜査機関から要請を受けても「提供できるデータがない」という状態になるためです。
日本の電気通信事業法では、通信事業者に対して「通信の秘密」の保護を義務付けています。「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」でも、通信記録の取得自体は業務上必要な範囲で認められていますが、第三者への提供は原則として禁止されています。
ただし、裁判官が発付する令状に基づく捜査機関からの要請には応じる義務があります。つまり日本国内のVPN事業者は、ログを保存している場合には開示に応じなければならない可能性があるということです。
この点が、次のセクションで解説するVPN本社所在国の重要性につながります。

ノーログVPNの信頼性を判断するうえで、VPN事業者の本社がどの国にあるかは非常に重要な要素です。国によってデータ保持義務や政府機関への協力義務が異なるため、同じ「ノーログ」を掲げていても法的な強度が大きく変わります。
以下に、主要VPNサービスの本社所在国と法的環境の違いを整理します。
国際的な情報機関の連携体制として知られるのが「ファイブアイズ(5 Eyes)」です。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国が加盟しており、通信情報の相互共有を行っています。
さらに、デンマーク、フランス、オランダ、ノルウェーを加えた「ナインアイズ(9 Eyes)」、ベルギー、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデンを含む「フォーティーンアイズ(14 Eyes)」という拡大同盟も存在します。
これらの同盟国に本社を置くVPN事業者は、自国の法律に基づいてデータ提供を求められる可能性があります。さらに、加盟国間でデータを共有することで、ある国の法的制限を迂回して情報を取得するケースも指摘されています。
そのため、プライバシーを重視するVPNサービスの多くは、これらの同盟に属さない国に本社を置いています。
主要なノーログVPNサービスの本社所在国と、その法的環境をまとめました。
サービス名 | 本社所在国 | 情報同盟 | データ保持義務 |
|---|---|---|---|
NordVPN | パナマ | 非加盟 | なし |
ExpressVPN | 英領ヴァージン諸島 | 非加盟 | なし |
Proton VPN | スイス | 非加盟 | なし |
Surfshark | オランダ | 9 Eyes | あり(ただしVPNは対象外) |
CyberGhost | ルーマニア | 非加盟 | なし(EU指令を違憲判決で無効化) |
PIA | アメリカ | 5 Eyes | 連邦法での義務なし |
パナマ、英領ヴァージン諸島、スイスは、いずれもデータ保持を義務付ける法律がなく、情報同盟にも属していません。NordVPN、ExpressVPN、Proton VPNがこれらの国を選んでいるのは、法的環境がプライバシー保護に適しているためです。
スイスの場合、Proton VPNは「現行のスイス法の枠組みにおいて、VPNサービスにログ記録の義務はない」と公式に明言しています。2019年には裁判所からログの提出を命じられましたが、ログが存在しなかったため提供できなかったという実例もあります。
VPN事業者がノーログを実践していることを法廷で証明した代表的な事例が、アメリカのPrivate Internet Access(PIA)です。
2016年、FBIがPIAに対して召喚状を発行し、ユーザーの接続ログを要求しました。しかしPIAが提供できた情報は「使用されたIPアドレスがアメリカ東海岸のものである」という程度にとどまりました。2018年にもハッキング事件に関連して再度召喚を受けましたが、同様にログが存在せず、提供できるデータはありませんでした。
また、2016年にはロシア当局がPIAのサーバーを物理的に押収する事態も発生しました。しかしサーバーからユーザーデータは発見されず、PIAはその後ロシアからの撤退を決定しています。
これらの事例は、ノーログポリシーが単なる宣伝文句ではなく、実際に機能していることを示す重要な実績です。
海外でのインターネット利用においてはVPNだけでなく、通信回線そのものの確保も重要です。利用者No.1の海外eSIMアプリ「トリファ(trifa)」なら、渡航先でもモバイルデータ通信が使えるため、セキュリティリスクの高い公共ネットワークに頼る必要がありません。

ノーログVPNを使っていれば開示請求から完全に守られるわけではありません。技術的な問題やユーザー側の設定ミスによって、身元が特定されるリスクは残ります。ここでは、ノーログVPNを利用していても情報が漏れる可能性がある5つのケースを解説します。
VPN接続中であっても、DNS(ドメインネームシステム)のリクエストがVPNトンネルの外を通ってしまう「DNSリーク」が発生することがあります。この場合、ISP側にどのWebサイトにアクセスしたかの記録が残り、開示請求の対象となり得ます。
また、WebRTCと呼ばれるブラウザの機能が原因で、実際のIPアドレスが露出するケースもあります。ChromeやFirefoxではWebRTCがデフォルトで有効になっているため、VPN利用者は無効化の設定を行うか、WebRTCリーク防止機能を持つVPNサービスを選ぶことが重要です。
DNSリークが起きていないかは、各VPNサービスが提供するリークテストツールで確認できます。定期的にチェックする習慣をつけておくと安心です。
関連記事: VPNの種類を徹底解説!接続方式・用途・プロトコル別の違いと選び方
キルスイッチとは、VPN接続が何らかの原因で切断された際に、自動的にインターネット接続を遮断する安全機構です。この機能がオフになっていたり、正常に動作しなかった場合、VPN切断中に生のIPアドレスで通信が行われてしまいます。
VPNアプリをインストールした直後は、キルスイッチがデフォルトで無効になっているケースもあります。設定画面で必ず有効化しておきましょう。
また、OSのアップデート後やスリープからの復帰時にVPN接続が切れることがあります。キルスイッチが正しく動作していれば、このようなタイミングでも通信が保護されます。
IPアドレスを隠していても、ブラウザフィンガープリントと呼ばれる技術で個人を特定される可能性があります。ブラウザの種類、画面解像度、インストールされたフォント、タイムゾーンなどの情報を組み合わせることで、高い精度でユーザーを識別できる技術です。
VPNはあくまでIPアドレスの匿名化と通信の暗号化を担うツールです。ブラウザフィンガープリントへの対策としては、プライバシー重視のブラウザ(Brave、Tor Browserなど)の利用や、ブラウザ拡張機能の導入が有効です。
VPNだけですべてのプライバシーリスクを排除できるわけではないことを理解しておきましょう。
無料VPNサービスの中には、ユーザーのアクティビティログを収集し、広告会社や第三者にデータを販売しているものがあります。「ノーログ」を謳っていても、プライバシーポリシーの詳細を確認すると、実際にはデータ収集を行っていると明記されているケースも少なくありません。
無料サービスは収益源が限られるため、ユーザーデータの販売やターゲティング広告の表示で運営費を賄っている可能性があります。プライバシー保護を目的としてVPNを導入するのであれば、第三者監査を受けた有料サービスを選ぶことをおすすめします。
また、信頼性を判断するもう1つの指標が「透明性レポート」です。CyberGhostは四半期ごとにレポートを公開しており、2025年第1四半期には105,332件のDMCA苦情と3件の警察要請を受けましたが、ノーログポリシーにより提供できるデータはなかったと報告しています。
VPNが保護するのはネットワーク経路上の通信です。端末自体がマルウェアに感染している場合、キーボード入力や画面表示が直接記録され、VPNの保護範囲外で情報が流出する可能性があります。
スマートフォンやPCにセキュリティソフトを導入し、OSやアプリを常に最新の状態に保つことも、総合的な情報漏洩対策には欠かせません。
VPNは通信経路の保護に特化したツールであり、万能ではないことを認識したうえで、端末側のセキュリティと組み合わせて利用しましょう。
関連記事: スマホにVPNは必要?メリット・選び方・おすすめアプリを初心者向けに徹底解説

ノーログVPNを選ぶ際には、単に「ノーログ」と宣言しているかどうかだけでなく、その信頼性を裏付ける複数の要素を確認する必要があります。ここでは、VPN選びで特に重視すべき5つのチェックポイントを紹介します。
ノーログポリシーの信頼性を判断するうえで最も客観的な指標が、独立した第三者機関による監査です。特にISAE 3000基準に基づく監査は国際的に認められた評価手法であり、その結果は高い信頼性を持ちます。
2026年3月時点で、主要サービスの監査実績は以下のとおりです。
サービス名 | 監査法人 | 累計監査回数 | 最新監査時期 |
|---|---|---|---|
ExpressVPN | KPMG(他Cure53等) | 23回(うちKPMG 3回) | 2025年2月 |
NordVPN | Deloitte | 6回 | 2025年12月 |
Proton VPN | Securitum | 4回 | 2025年 |
Surfshark | Deloitte | 2回 | 2025年 |
CyberGhost | Deloitte | 3回 | 2025年 |
監査回数が多いほど、継続的にノーログ体制を維持していることの証拠になります。また、KPMGやDeloitteといった大手監査法人が担当している点も信頼性の判断材料です。
サーバーの技術仕様も重要なチェックポイントです。RAMオンリーサーバーを採用しているサービスでは、サーバーの再起動時にすべてのデータが自動的に消去されます。ハードディスクにデータが残る従来方式と比べて、物理的なサーバー押収時のリスクが大幅に低減します。
ExpressVPNの「TrustedServer」技術、NordVPNのディスクレスサーバー、Surfsharkの全サーバーRAMオンリー化など、主要サービスはいずれもこの方式に移行しています。
VPNの仕組みについて詳しく知りたい方は、接続方式の違いを解説したこちらの記事も参考になります。
関連記事: VPN接続方法をOS別に徹底解説!初心者向け設定手順と選び方ガイド
VPNサービスのプライバシーポリシーには、どのようなデータを収集し、どのように管理するかが記載されています。「ノーログ」と宣言しているサービスでも、ポリシーを詳細に読むと例外規定が含まれていることがあります。
確認すべきポイントは、アクティビティログの非保存が明記されているか、接続ログの扱い(保存期間・匿名化の有無)が明確か、法執行機関からの要請への対応方針が記されているか、の3点です。
さらに、透明性レポートを定期的に公開しているサービスは、法的要請の件数やその対応結果を自主的に開示しています。こうしたレポートは、ノーログポリシーが実際に機能しているかを確認する貴重な資料です。

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ライター
トリファ編集部(海外旅行の準備・現地情報担当)
海外旅行におけるベストシーズン、持ち物、現地で気をつけることなど、海外旅行の準備と現地情報を初心者にもわかりやすくまとめています。内容は必要に応じてトリファの現地スタッフへのヒアリングを行い、現地の状況も踏まえて整理しています。あわせて季節・制度・営業時間など変わりやすい情報は、公的機関や交通機関・施設の一次情報を確認し、変更があれば記事へ反映します(記事内に最終更新日を明記)。