
「VPNを使えば警察に特定されないのか」という疑問は、インターネットのプライバシーに関心がある方なら一度は考えたことがあるのではないでしょうか。結論から言えば、VPNの利用自体は日本では完全に合法ですが、犯罪行為に使用した場合は捜査の対象になります。 VPNはIPアドレスの秘匿や通信の暗号化によって、通常のインターネット利用よりも高い匿名性を提供します。しかし、警察の捜査にはISP(インターネットサービスプロバイダ)へのログ開示請求やVPN事業者への国際的な捜査協力など、複数の手段が用意されています。 本記事では、VPN利用者が警察に特定される仕組みや法的根拠、実際の捜査プロセスについて客観的に解説します。VPNの正しい知識を身につけて、安全にインターネットを利用するための参考にしてください。
目次

VPNがなぜ匿名性を高めるのかを理解するためには、まずその仕組みを知る必要があります。VPNは通信を暗号化し、専用のサーバーを経由させることで、利用者のIPアドレスを外部から見えにくくする技術です。ここでは、VPNの基本的な動作原理と匿名性の限界について解説します。
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的な専用回線を構築する技術です。利用者のデバイスとVPNサーバーの間に「トンネル」と呼ばれる暗号化された通信経路を作り、データを保護します。
このトンネルを通るデータはAES-256などの強力な暗号方式で保護されるため、第三者が通信を傍受しても内容を読み取ることはできません。たとえば、カフェのフリーWi-Fiを利用している場合でも、VPNを使えば通信内容が暗号化されるため、盗聴のリスクを大幅に軽減できます。
また、VPNサーバーを経由することで、アクセス先のWebサイトには利用者の本来のIPアドレスではなく、VPNサーバーのIPアドレスが表示されます。これがVPNによる匿名性の基本的な仕組みです。
VPNを使うと、Webサイトやオンラインサービス側からは利用者の実際のIPアドレスを直接確認することができなくなります。表示されるのはVPNサーバーのIPアドレスであり、同じサーバーを利用している多数のユーザーと共有されるため、個人を特定する手がかりが減ります。
しかし、IPアドレスの秘匿だけでは完全な匿名性は実現できません。ブラウザのCookie情報、アカウントへのログイン履歴、端末固有のフィンガープリント情報など、IPアドレス以外にも個人を特定し得る情報は複数存在します。
たとえば、VPNを使ってSNSに投稿していても、同じアカウントにVPNなしでログインした履歴が残っていれば、そのIPアドレスから利用者が特定される可能性があります。VPNは万能のツールではなく、あくまで匿名性を高める手段の一つです。
VPNにはさまざまな通信プロトコル(通信規約)が存在し、それぞれセキュリティの強度や通信速度が異なります。主なプロトコルとその特徴は以下のとおりです。
プロトコル | セキュリティ | 速度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
WireGuard | 高い | 非常に速い | 軽量で高速、多くのVPNサービスが採用 |
OpenVPN | 高い | やや遅い | オープンソースで信頼性が高い |
IKEv2/IPsec | 高い | 速い | モバイル環境に強い |
L2TP/IPsec | 中程度 | 普通 | 標準的だが一部脆弱性の指摘あり |
一般的に、WireGuardやOpenVPNを採用しているVPNサービスは、暗号化の強度が高く、通信内容の解読は現実的に困難とされています。VPNサービスを選ぶ際は、どのプロトコルに対応しているかを確認することが重要です。
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VPNの利用に関して「違法なのではないか」と不安を感じる方もいるかもしれません。日本の法律では、VPNの利用自体は合法です。ただし、VPNを使って行った行為が犯罪に該当する場合は、当然ながら法律で罰せられます。ここでは、VPNに関連する日本の法律について整理します。
日本国内において、VPNの利用を禁止する法律は存在しません。個人が通信のプライバシーを守る目的でVPNを使用すること、企業がリモートワークのセキュリティ対策としてVPNを導入することは、いずれも合法的な利用方法です。
日本国憲法第21条は「通信の秘密」を保障しており、電気通信事業法第4条でも通信の秘密の保護が規定されています。VPNの利用はこうした通信の秘密を技術的に担保する手段であり、法的に問題のある行為ではありません。
ただし、中国やロシア、北朝鮮などの一部の国では、VPNの利用が制限または禁止されている場合があります。海外でVPNを利用する際は、渡航先の法律を事前に確認することが大切です。
関連記事: 海外でVPNは必要?選び方・使い方・注意点を徹底解説
日本には「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(不正アクセス禁止法)があり、他人のIDやパスワードを無断で使用してシステムに侵入する行為などが禁止されています。この法律に違反した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
VPNを利用して自分のIPアドレスを隠した上で不正アクセスを行った場合でも、不正アクセス禁止法の適用対象となります。VPNはあくまで通信を保護する技術であり、違法行為を正当化するものではありません。
2023年には、IT企業の従業員が海外VPNサービスを利用して社内システムに不正アクセスした事件で、警視庁が容疑者を逮捕しています。VPNを使っていたにもかかわらず、社内のログ解析から犯行が特定されました。
インターネット上での誹謗中傷や権利侵害が発生した場合、被害者はプロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づいて、発信者の情報開示を請求できます。
2022年10月の法改正により、開示請求の手続きが簡素化されました。従来は2段階の裁判手続きが必要でしたが、改正後は1回の非訟手続きで発信者情報の開示命令を得られるようになっています。
ISP(インターネットサービスプロバイダ)は通信ログを一定期間保存しており、裁判所の命令があればこのログを開示する義務があります。ログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、一般的には3か月から6か月程度とされています。

犯罪捜査において、警察はVPN利用者をどのように特定するのでしょうか。VPNによる匿名化は確かに捜査を難しくしますが、警察にはさまざまな手段があります。ここでは、実際に使われる主な捜査手法を解説します。
警察が最初に着目するのは、ISPが保有する通信ログです。VPNを利用する場合でも、利用者はまずISPを通じてインターネットに接続します。ISPのログには「いつ、どのIPアドレスがVPNサーバーに接続したか」という記録が残ります。
刑事事件の捜査では、裁判所が発行する令状に基づいてISPにログの開示を求めることができます。ISPは通信の秘密を守る義務がありますが、正当な法的手続きを経た令状には従う義務があります。
この方法により、「どのIPアドレスの利用者が、いつVPNサーバーに接続したか」を把握できます。ただし、ISPのログだけではVPN経由で何をしていたかまでは判明しません。通信内容はVPNによって暗号化されているためです。
ISPのログだけでは不十分な場合、警察はVPN事業者に対して捜査協力を要請することがあります。日本国内に拠点を置くVPN事業者であれば、日本の法律に基づく令状で対応を求めることができます。
海外に拠点を置くVPN事業者の場合は、国際捜査共助条約(MLAT)やインターポールを通じた協力要請が必要になります。この手続きには時間と労力がかかるため、比較的重大な犯罪でなければ実施されにくいのが現状です。
なお、VPN事業者がノーログポリシー(通信ログを保存しない方針)を採用している場合、仮に捜査協力に応じる意思があっても、提供できるデータが存在しないという状況が生じます。ただし、ノーログポリシーの信頼性はサービスによって異なり、実際にはログを保存していたケースも報告されています。
警察の捜査では、VPNの通信ログだけに頼るわけではありません。犯罪捜査には多角的なアプローチが取られ、VPN以外の情報から利用者が特定されるケースが少なくありません。
具体的には、以下のような手がかりから特定に至ることがあります。
実際の事件では、VPNを使っていた容疑者が、VPNを使い忘れた1回のアクセスから特定されたり、VPNの契約に使用したメールアドレスから身元が判明したりしたケースがあります。
日本では「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(通信傍受法)により、組織犯罪など特定の重大犯罪に限って、裁判官の令状を得た上で通信のリアルタイム傍受が認められています。
当初の対象は薬物犯罪、銃器犯罪、組織的な殺人、集団密航の4類型でしたが、2016年の法改正により詐欺、窃盗、傷害、誘拐など9類型が追加されました。ただし、追加された犯罪類型については一定の組織性が要件とされており、一般的なサイバー犯罪に適用されることはまれです。
VPNで暗号化された通信であっても、VPNサーバーへの接続自体はISPレベルで確認できるため、「いつVPNに接続し、いつ切断したか」という接続パターンの情報は取得可能です。

「ノーログVPN」とは、利用者の通信ログを保存しないことをポリシーとして掲げるVPNサービスのことです。警察の捜査に対してログを提出できないため、匿名性が高いとされています。しかし、その信頼性にはさまざまな側面があります。
ノーログポリシーには、実は複数のレベルがあります。「完全にログを保存しない」と謳っていても、サービスによって定義が異なるため注意が必要です。
一般的に、VPNのログは「接続ログ」と「アクティビティログ」の2種類に分けられます。接続ログには接続日時やIPアドレス、使用したサーバーなどの情報が含まれ、アクティビティログにはアクセスしたWebサイトやダウンロードしたファイルなどの通信内容が記録されます。
多くのノーログVPNは「アクティビティログは保存しない」としていますが、接続ログについてはサービスの運用上、一定期間保持するケースもあります。VPNサービスを選ぶ際は、どの範囲のログが対象なのかを利用規約で確認することが重要です。
ノーログポリシーを掲げるVPNサービスの中には、その信頼性を証明するために第三者機関による監査を受けているところがあります。たとえば、NordVPNはDeloitte(デロイト)による監査を受け、ExpressVPNはKPMGやCure53による監査を受けています。
第三者監査では、実際にサーバー上にユーザーの通信ログが残っていないかを技術的に検証します。監査を受けたVPNサービスは「ノーログ」の主張に一定の裏付けがあると言えます。
ただし、監査はあくまで「その時点でのサーバー状態」を確認するものであり、将来にわたってログが保存されないことを保証するものではありません。過信は禁物です。
VPN事業者がどの国に拠点を置いているかは、警察の捜査に対する対応に大きく影響します。日本国内に法人がある事業者は日本の法律に従う義務がありますが、海外拠点の事業者に日本の法律を直接適用することはできません。
たとえば、パナマに本社を置くNordVPNや、英領ヴァージン諸島に拠点を持つExpressVPNは、これらの国・地域にデータ保存義務がないことを理由に、ログを保存しないポリシーを維持しています。
一方で、国際捜査共助条約に基づく要請には、拠点国の法律に従って対応する可能性があります。実際にNordVPNは「適切な法的手続きが踏まれた場合は対応する」としつつも、「保存しているデータがないため、提供できる情報がない」というスタンスを取っています。

VPNは本来、通信のセキュリティやプライバシーを保護するための正当な技術です。海外旅行中のフリーWi-Fi利用やリモートワークでのセキュリティ対策など、合法的かつ実用的な活用方法は数多くあります。ここでは、VPNを安全に使うためのポイントを紹介します。
VPNが特に役立つのは、セキュリティリスクの高い環境でインターネットを利用する場面です。たとえば以下のようなシーンでは、VPNの利用が強く推奨されます。
海外旅行中の通信手段としては、利用者No.1の海外eSIMアプリ「トリファ(trifa)」でデータ通信環境を確保した上で、VPNを併用するとセキュリティがさらに強化されます。
VPNの利用自体は合法ですが、VPNを使って以下のような行為を行った場合は、日本の法律に基づいて処罰される可能性があります。
VPNによってIPアドレスを隠しても、前述のとおり警察にはさまざまな特定手段があります。「VPNを使えばバレない」という考えは誤りです。
安全にVPNを利用するためには、信頼性の高いVPNサービスを選ぶことが重要です。以下のポイントを確認しましょう。
無料VPNは通信速度やデータ量に制限があるだけでなく、広告表示のためにユーザーデータを収集しているケースもあります。セキュリティを重視するなら、実績のある有料VPNサービスの利用をおすすめします。
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海外旅行中に安全なインターネット環境を確保することは、個人情報の保護だけでなく、快適な旅のためにも欠かせません。VPNと安定したデータ通信環境を組み合わせることで、セキュリティ対策はさらに強固になります。
海外旅行でVPNを活用するためには、まず信頼できるデータ通信環境が必要です。トリファ(trifa)は、世界200か国以上に対応した海外eSIMアプリで、渡航先ですぐにデータ通信を利用できます。
SIMカードの差し替えや現地キャリアとの契約は不要で、アプリから渡航先のプランを購入するだけで利用を開始できます。現地のフリーWi-Fiに頼らず自分専用のデータ回線を持てるため、通信の盗聴リスクを根本から排除できます。
トリファのeSIMによる専用回線にVPNの暗号化を重ねることで、通信経路とデータ内容の両方を保護する二重の防御が実現します。オンラインバンキングやパスワード入力が必要なサービスも、不安なく利用できるようになります。
海外での通信トラブルを避けたい方は、渡航前にトリファのアプリをダウンロードし、渡航先のeSIMプランを購入しておくのがおすすめです。

ライター
トリファ編集部(海外旅行の準備・現地情報担当)
海外旅行におけるベストシーズン、持ち物、現地で気をつけることなど、海外旅行の準備と現地情報を初心者にもわかりやすくまとめています。内容は必要に応じてトリファの現地スタッフへのヒアリングを行い、現地の状況も踏まえて整理しています。あわせて季節・制度・営業時間など変わりやすい情報は、公的機関や交通機関・施設の一次情報を確認し、変更があれば記事へ反映します(記事内に最終更新日を明記)。